過去の記録

  賢女手習並新暦

テーマは、「人の運命〜出会い、艱難辛苦、敵(かたき)とは何者か〜」 322年ぶりで上演されるこの物語!

新暦が発布された年に、暦を司る愛染明王をからませた芝居が、竹本義太夫によって上演された。近松門左衛門が書いたものともいわれている。
322年の時を経て、再演に挑戦する。

愛染明王は、男女縁結びの仏ともいわれ、男女の恋と、親の敵討ちと合わせた筋立ての物語である。
この物語の最後は、なぞのようなことばで終わっている。 

【作る側の願い】
自分の人生の負のことを考え、見方をかえるきっかけとなってもらえればと思っています。そして、たのしくご覧いただきたいと願います。


「賢女手習並新暦」(けんじょのてならいならびにしんこよみ)
 作者:未詳(近松門左衛門存擬作)/上演記録:貞享2年(1685年)

<登場人物>
菊池禅定道清(きくちぜんじょうみちきよ)
九州太宰の城主だったが、14年前に安国に殺された。
 
瑠璃姫(るりひめ)(18才)
道清の娘。父親の敵を討つため、九州・太宰から京都にでてきている。
 
太刀丸(16才)
瑠璃姫の弟。橋本の宿の警察ガードマン。
 
道清の妻。40才。後に、旅の途中で亡くなる。
 
平馬之丞(へいまのじょう)
姉弟の乳人。敵討ちのために、一家を助け、太刀丸と共に働いている。
 
法王
この国の天皇。60才。日本の国に合った暦を作るために、安国と実方を勅使(天皇の名代として権限を与えられた人)として東西に派遣する。
 
三位別当安国(さんみべっとうやすくに)
道清を殺した。今は法王に仕えている。西国の調査を法王から託されたが、後に、勝手に蝦夷の王となる。
 
藤原実方中将(ふじわらのさねかたちゅうじょう)
法王に仕えている。関東の調査を法王より命令される。大阪天王寺の愛染堂の前で瑠璃姫と出会い、恋に落ちる。
瑠璃姫を助けて、安国を討つ。

<解説>
この物語のバックにある歴史的事実
遣唐使として中国に行き、暦を教えてもらうことをやめて800年が経ち、日食が2日も違ってきました。そこで、天皇は渋川春海に、経緯と緯度を計算し直し、日本独特の暦を作れと命じました。どうしても解けない問題があったとき、禁書である「天経惑門」という、ガリレオガリレイの太陽暦が日本に入ってきました。渋川春海は、中国からはいってきた太陰暦と、西洋の太陽暦を取り入れて、日本独特の太陰太陽暦の暦を作りました。

 その次の年、近松は「賢女手習並新暦」を書き、井原西鶴は「暦」を書きました。
 
暦と愛染明王の関係について
天の運行は、月・太陽・星の動きのことであり、そこから暦ができている。愛染明王は暦を司る明王である。近松は、暦の物語を書くときに、男女の恋愛を成就させる仏でもある愛染明王にまつわる男女の愛の話しを考えだした。
 
愛染明王について
愛染という名前のとおり、愛情・情欲をつかさどり、愛欲貪染をそのまま浄菩提心(悟りの心)にかえる力をもち、煩悩即菩提を象徴した明王です。すなれち、人間にはさまざまな欲望がありますが、この欲望は人間には滅亡へとかりたてる力を持つとともに、時には生きて行くうえでの活力源となり、より多くのものを可能にし、高める力を持っています。この両刃の剣である力強い欲望の工ネルギーを、悟りを求め自らを高めようとする積極的なエネルギーに浄化しようというのが愛染明王の教えです。怨愛平等。
 
城谷小夜子と愛染さんとの出会い
今から9年前。金沢の宝泉寺さんの護摩焚きに参加したその日は、年に1回の愛染さんの護摩焚きの日であった。住職の辻雅榮さんから愛染さんのはなしを聞いた。

愛染明王は、我々衆生が生まれつき備えている愛欲や、むさぼりの心(貧染)をそのまま、み仏の菩提心に変えてくださる(煩悩即菩提)仏さまであるといわれている。

これをみんなに伝えたいなぁ、と強く思った。それから5年たち、この作品と出会った。
 
この作品にまつわる本当のドラマ
新暦が公布されたことは、大変センセーショナルな出来事であった。大阪で宇治加賀之掾の劇場と、加賀之掾の弟子である竹本義太夫の劇場で、新暦の話しが上演された。弟子と師匠が同じテーマで芝居をかけたのである。

結果、宇治加賀之掾の上演した井原西鶴作「暦」は不評で、なおかつ、劇場が火事になり宇治加賀之掾は京都に帰った。貞享2年3月24日の火事であった。
 

<あらすじ>
日本の法王は、中国唐の国から取り入れた暦が、だんだん事実に合わなくなってきたため、日本の実情にあった新しい暦を作ろうと思い、関東へ実方中将を、西国へ安国に日本の西と東を調査してこい、と命じることが物語の発端。

安国は、14年前に、九州太宰の菊池禅定道清を殺していた。その家族が自分をねらっているため、西国に行きたくなかった。法王から貰った御判(証明書)を実方から奪い、自分は関東に行こうと、実方を追った。

実方は、旅の無事を祈ろうと、天王寺に参ったとき、愛染堂の前で瑠璃姫を見て一目惚れした。その夜、瑠璃姫の家に泊まり、一家が安国を追っていることを知りびっくりする。実方と瑠璃姫は結ばれた。

安国は、太刀丸と平馬之丞に「実方こそが安国だ」と嘘を言い、まんまと実方の大事の御判を取り上げた。

家に帰った太刀丸は瑠璃姫に、実方こそ父の敵だと告げた。瑠璃姫は、敵討ちと夫婦の契りに悩み、自らが実方の身代わりとなって、太刀丸に刺される。

安国が嘘を言ったことがわかり、誤解が解けて、太刀丸と平馬之丞は、安国を討つために出かける。しかし、平馬之丞は殺され、太刀丸と実方は、安国を追っていった。

残された瑠璃姫と母は、瑠璃姫のケガが直るのを待ち、太刀丸を追いかけて旅に出た。しかし、京都から関東、津軽に来たとき、母は病で亡くなる。

通りかかった漁師達から、安国は蝦夷の王となっていること、実方と太刀丸が安国を追って蝦夷へ行ったことを知る。

どうして蝦夷に行ったらいいかと、途方に暮れている瑠璃姫の元に、姫が描いた絵馬が本当の馬になって飛んできて、蝦夷まで連れて行ってくれた。そこで実方、太刀丸と再会し、安国を討った。

3人は無事都に帰り、万歳なのだが、近松は、「万歳とだけいえるものではありませんね」と、物語は終わっている。
 

出演は、城谷小夜子(12役と4つの動物)、砂田直規(歌)、河野玲子・大久保雅子(パーカッション)、乙部順子(案内人)

【連絡先】
NPOグローバルシアター和の輪
〒270−2251 松戸市金ヶ作60−4
Tel:047-368-1361/Fax:047-368-1361
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