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小松左京女シリーズ朗読会「流れる女」を聞いて
小松左京の「〜の女」というタイトルのついた小説10作品のなかで、7番目に書かれた小説「流れる女」。北陸の金沢とおぼしき古都で、偶然であった芸事の師匠「おゆきさん」に次第に惹かれていく50代のやもめ「山村俊夫」。人との出会いと別れに流されながらも、変わらぬ彼女の凛とした美しさに打たれて、結婚を決意する。時を同じくして義父と息子も、それぞれの相手を見つけて結婚すると言い出す。
ミステリアスで、しかも「おゆきさん」の魅力によってぐいぐいと引き込まれていく作品だが、城谷さんの朗読でも、人生に翻弄されながらも美しさを失わない「おんな」の魅力を存分に表現してくれた。また、セックスの対象としてだけではない、男女のあり方、「人生の寂寥」をきちんと言葉であらわしている作品でもある。
朗読のあと、参加者の感想を聞いたところ、男女でハッキリと分かれたのは、最後の終わり方である。謎が謎のままで終わっているのだが、それに対して不満を表明したのは、圧倒的に男性だった。「ハッキリしないと落ち着かない」という。それに対して女性の多くは「受け手によって自由に想像することが出来るので、その方が余韻が残ってよい」という感想。おもしろい反応だった。
今回は効果音も入れず、声の力だけで言葉を伝えてくれたが、35分にまとめた脚色もよく、充分に作品の内面まで表現できたと思う。

乙部 順子(小松左京マネージャー・和の輪副代表)

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